夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【94】アキれた政府の主権・領土意識の希薄さ
   小泉の「三位一体改革」はパンドラの箱
2004.11.25

 最近、わが国の主権意識について考えさせられる出来事が2つ続いた。
 まず、今月10日、中国の原子力潜水艦が日本領海を侵犯する事件が発生した。米軍からの通報で海上自衛隊はかなり早い時点から原潜の位置を把握していたが、政府が海上警備行動を発令したのは原潜が領海を出てから45分後だった。
 国家主権を明確に侵害する領海侵犯を受けながら、どうして中国政府にいち早く事実確認を求め、抗議するなど毅然(きぜん)とした姿勢が取れなかったのか。
 中国原潜は約55時間にも及ぶ追尾劇の間、領海内や近くをゆっくりと蛇行していたというから、日本の対応をバカにしていたというしかない。
 また、ロシアのプーチン大統領が先日、北方領土交渉に関して、歯舞(はぼまい)・色丹(しこたん)2島の引き渡しを軸に決着を図りたいとの意向を示した事も重大だ。前出の2島に国後(くなしり)・択捉(えとろふ)を加えた4島が日本固有の領土であることは歴史的事実。プーチン大統領が来年早々の訪日前に日本側に揺さぶりをかけてきたとすれば看過できない問題である。
 領土なくして国家は存在しない。欧州には「一寸の領土を奪われて黙っている国民は、全部の領土を奪われても黙っている」という言葉があるほど。ロシアに対し、「北方4島が返還されなければ、両国の経済関係に重大な支障が出る」ぐらいの圧力をかけてもいい。
 政府の主権意識、領土領海意識の希薄さにはあきれるばかりだ。
 さて話は変わるが、現在、「三位一体の改革」と称して、国と地方の権限と財源を見直す話が進められているが、これがパンドラの箱を開けたような大混乱に陥っている。
 これは小泉純一郎首相が中央政治と地方政治、中央政府と地方自治体の役割分担を明確にしないまま、地方6団体に「3兆円の補助金削減」という枠をはめて答申を求めたことが発端だ。
 地方交付税がバタバタと削られているなか、地方6団体が主張する具体的な財源保証がないまま国の権限だけが地方に移譲されれば、2、3年後に地方の財政運営が不可能になるのは火を見るより明らかだ。
 そのとき、国民の批判を浴びるのは政権与党・自民党であり、まさに、わが党は「進むも地獄、退くも地獄」という窮地に追い込まれている。このまま推移すれば、誰が「ポスト小泉」となっても、次期総選挙・参院選は大惨敗を喫するだろう。自民党崩壊が近づいている。

※無断転載を禁ず

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