夕刊フジ連載
インターネットを通じて知り合ったとみられる集団自殺が相次いでいる。
最近の新聞記事を読み返しただけでも、28日に東京都練馬区で男性4人と群馬県水上町で男女3人、22日には茨城県つくば市で女性2人、21日に兵庫県篠山市で男性3人と福岡市で男女3人が自殺している。
宗教団体の集団自殺なら時々聞くが、見ず知らずの若者が自殺を共有するためだけに集まり命を絶っていくなど、日本の異常性を示す背筋が寒くなる現象であり、外国では例を見ないだろう。
この背景には、グローバリゼーションの名の下、米国式の個人主義、自由主義を間違った形で受け入れたことで、日本人が古くから持っていた「共生」「連帯」といった感覚が、国家や地域社会、家庭、友人関係などから急速に失われたことが一因ではないか。
これまでの日本は「他人を思いやり、いたわり合う」という矜持(きょうじ)を持ち、どんな家庭に生まれても努力次第で認められるよう、能力があってやる気のある人々を切り捨てないような社会を築き上げてきた。
ところが、最近の日本には富と所得が偏った階層社会が出現しつつあり、「自分さえ良ければ他人はどうなってもいい」「他人の不幸など関係ない」といった、極めて自分本位の風潮が広がっているように思える。
確かに、大企業は利益を上げているが、その陰には数千人単位の激しいリストラがあり、本来、下請けや孫請けの中小零細企業が得るべき利益まで吸い上げている企業もある。そして、これを国が後押しするようなムードまである。
こうした社会のなかで、自分の人生に夢も希望も持つことができない若者が増えており、家族や地域とのきずな、友人や知人との人間同士の触れ合いが希薄な若者がインターネットを通じた集団自殺を選んでいるのではないか。
凶悪犯罪も激増
一方、社会や未来への失望が外に向かうのが犯罪であり、凶悪犯罪は激増の一途をたどっている。警察白書によると、平成14年刑法犯認知件数は285万3000件を超え、7年連続で過去最多を記録し、この10年間に100万件以上増加しているという。
これまで私は「日本人の精神がゆがんでいる。魂が漂流し始めている」と警鐘を鳴らしてきたが、心配が現実になりつつある。こうした現象を直視しないで、外交や経済、教育を論じていても意味はない。
わが国は重大な岐路に立たされている。もう一度、日本の良さを見直して、国家を根本から変えていくべきではないか。
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