夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【96】「サマワ治安」判断態勢に問題あり
2004.12.09

悪化極めて深刻

 政府は9日、イラク南部サマワへの自衛隊派遣の1年延長を閣議決定する方針だという。
 マスコミや野党陣営からは、国会閉会後の閣議決定について「民主的ではない」と疑問を投げかけたり、決定直前の大野功統防衛庁長官のサマワ訪問を「単なるショーに過ぎない」と批判する声が聞こえる。
 私は派遣延長は政府の決定事項であり、小泉純一郎首相以下、政府の責任においてきちんと決定すべきと考えているが、大前提として、本当に現地がイラク復興支援特措法に基づいた任務を安全に遂行しうる状況にあるのか否か、冷静に分析すべきだと訴えている。
 イラク国内では、連日のように米軍中心の掃討作戦と反米武装勢力によるテロ行為の応酬が続いており、米軍兵士や武装勢力だけでなく、多くの一般市民(女性や子供を含む)が犠牲となっている。
 ブラヒミ国連事務総長特別顧問が先日、イラクで来年1月に予定されている国民議会選挙に関連して、「現在のような治安状況が続くようでは、期限通りに(選挙を)実施するのは不可能」という認識を示していたが同国の治安悪化は極めて深刻とみていい。
 大野長官を筆頭に、政府首脳らは「サマワの治安は安定している」というが、ならばどうして、外務相が日本の報道各社に出している同地からの「退去勧告」がそのままなのか。どんな戦闘地域にも従軍記者がいるのは世界的常識だがサマワには1人も記者がいない異常状況が続いている。
 私は先月初めに首相官邸を訪ねた際、細田博之官房長官に対し、「(治安が安定しているなら)自衛隊の任務を国民に知らせるためにも、退去勧告を撤回すべきではないか」と要望してきたが、いまだに撤回はされていない。
 大体、防衛庁の大古和雄運用局長がサマワの安全性について、「迫撃砲を数十発撃たれれば別だが、数発撃たれても危険だとは判断しない」と語っていたが、数十発も撃たれたら派遣隊員に甚大な犠牲が出る可能性は極めて高い。現地の治安状況を判断する態勢に問題があるのではないか。
 現状がイラク特措法の条件を満たしていないのは自明の理だが、そこをあえて派遣延長にするのは、首相以下、政府が「復興支援の有効性よりも、自衛隊がサマワに存在することが、日米同盟を維持することになる」と政治的判断を下しているからに他ならない。
 だが、それは間違いだ、そんなことをしなくても、すでに日本は米国の巨大な軍事基地となっており、米国側から日米同盟を揺るがしてくることはあり得ない。

※無断転載を禁ず

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