夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【98】政府は中身のない予算案を承諾した
2004.12.23

トレンドを無視

 政府は20日、平成17年度予算の財務省原案を了承した。残念ながら日本経済の将来に向けてのトレンドを無視して、財務省の「歳出を抑制して財政再建をやる」という思想だけが色濃く繁栄したものだった。
 日本経済は現在、景気の牽引(けんいん)役であったデジタル家電の不調を反映して、IT関連の生産が低迷。原油高や円高傾向も続き、輸出の増勢も鈍化。生産、個人消費、輸出のいずれも力強さを欠いている。
 こうした状況下で、どうやって内需を確実なものにして、日本経済を力強くしていくかという基本的判断もしないまま、予算原案が決められているのだ。
 17年4月からは国民年金保険料や雇用保険料の引き上げなどで家計の負担が増えるうえ、定率減税の縮小や個人住民税の課税対象の拡大といった増税策も検討されている。

 消費税UP控え

 18年度は所得税課税の抜本改正で最高税率の引き上げや課税最低限の引き下げ、各種控除の見直しなどもあり、19年度以降は消費税率の引き上げも検討課題として控えている。
 とても、政府として国民の方々に「日本経済は大丈夫。生活も大丈夫です」というシグナルを出せていない。これは大きな問題だといえる。
 もう1つ、防衛予算の効率化は当然だが、日本人拉致をめぐって北朝鮮への経済制裁を発動する姿勢を見せている以上、国の立場「防衛力縮減の方向」と打ち出すのは外交政策的には愚の骨頂といえる。
 北朝鮮の恫喝(どうかつ)に屈しないためにも、ミサイル防衛(MD)システムの全国規模での配備を断固してやるべきだ。
 簡単に言うと、国民国家の行く末を熟慮した政策判断が入っていないのだ。日本経済に対する中長期視野や外向的視点に立った予算案ではない。緊縮予算を志向する財務省の事務屋が、卓上で電卓をたたいて作ったとしか言いようがない。
 国と地方の役割分担を徹底的に議論するといわれた「三位一体の改革」だが、今回の予算案を見る限りその形跡はまったくない。小泉純一郎首相と与党、地方6団体が玉虫色の談合をしただけではないか。
 現在の政治が、掛け声とキャッチフレーズだけで中身がないことを象徴している予算案というしかない。

※無断転載を禁ず

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