夕刊フジ連載
ODAを津波救援に
スマトラ沖地震・大津波の発生から2週間が過ぎ、犠牲者は人類史上最悪といえる約15万人に達した。日本人にも多くの死者・行方不明者が出ており、私も連日届く悲しいニュースに心を痛めている。
日本政府はすでに救援・復興支援のため、5億ドル(約510億円)の無償資金協力のほか、津波早期警報システム構築に向けた協力、自衛隊の航空機・艦船・人員を活用した貢献ーなどを明らかにしている。
この未曾有の大災害に際して、私は経済大国でありアジアの一員でもある日本はさらに大規模な支援を検討すべきだと考えている。
例えば、政府開発援助(ODA)の配分を見直して、相当部分を今回の救援・復興支援に集中してはどうだろうか。この機会に、縮小・廃止論が浮上している対中ODAを大きく振り分けることも検討すべきだろう。
今回の大災害への対応は、国家や民族といったレベルを超え、同じ地球という星で暮らす人類そのものが問われているといっても過言ではない。
地球は46億年前に誕生して以来、過酷な大変動を繰り返してきた。生命死滅の危機を何度も乗り越えて、地上に人類祖先が現れたのは、わずか5、600万年前でしかない。
まだ、われわれは自然災害を制御できる科学技術を持っていない。といって「天災だから仕方ない」という姿勢は間違っている。
自然の脅威に100%備えることは難しいが、被害を最小限に抑えるためにも、過去の経験を踏まえた防災対策はすべきである。
「公共事業=悪」は間違い
以前このコラムにも書いたが、私が建設相だった平成9年7月、鹿児島県出水市の針原川で21人もの死者が出る土石流災害が発生した。私はすぐ現地に飛び、災害対策本部に詰めて救出作業や復旧作業の指示を出した。
針原川では2つの砂防ダムが建設中だったが、これがなければさらに被害が拡大していた恐れがあった。防災対策の必要性を身を持って感じたものだ。
ここ数年、「公共事業は悪」といった風潮が広まっているが、国民の生命と財産を守るのは国家の基本的義務。自然の脅威に備えるため、堤防や砂防ダムの整備を行うことは、国家として担うべき重要な任務なのである。
ともかく、人類は大変動を繰り返している地球上に、ヤドカリのように住んでいる小さな存在。
日ごろからできる限りの備えはしておかなければならない。
※無断転載を禁ず