夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【106】議連で終身刑の検討・準備
2005.02.24

 内閣府が19日に発表した「基本的法制度に関する世論調査」によると、死刑制度を容認する人が81.4%と、6年前に行われた前回調査の79.3%から2.1ポイント増え、初めて80%を超えたという。
 私は先週のこのコラムで、大阪府寝屋川市の私立小学校で発生した17才の卒業生による教師刺殺事件や、愛知県安城市のスーパーで起きた幼児刺殺事件など、凶悪かつ理不尽な事件が続発していることを取り上げた。

死刑支持に不安

 前出の調査結果はこうした治安悪化が背景にあるとみられるが、私は死刑制度に80%が賛成する日本社会にも不安や疑問を感じている。
 ご存じと思うが、私は警察にいた頃から死刑は廃止すべきだと考えており、現在、超党派の「死刑廃止議員連盟」の会長を引き受けている。
 その理由を簡単に言うと、まず凶悪犯といえども大多数は生まれ育った環境とか、社会状況の中で犯罪に走る場合が多く、生まれながらの凶悪犯はごく一部ということ。
 死刑を犯罪の抑止力と考える人も多いが、国家が犯罪者を抹消することで社会が健全化し、犯罪がなくなるということは現実にはあり得ない。
 冤罪(えんざい)の可能性も見逃せない。
 自分自身が警察に在籍していて思ったのは、現在の司法制度の下では依然として自白が「証拠の王」だということ。拘置され取り調べを受けた被害者が拘禁ノイローゼなどの異常心理になり、取調官の言いなりになるケースは少なくない。無実で処刑されるなど、絶対に許される物ではない。
 ただ、確かに許し難い凶悪卑劣な犯罪もあり、被害者や遺族の怒りや悔しさはよく分かる。加えて、現在の刑法では、死刑の次に重い無期懲役では受刑者を一生刑務所に入れておけるわけではなく、10数年経てば仮出獄が認められることから治安面などで不安を感じる人も多いだろう。
 そこで、死刑に変わる刑罰として終身刑を導入しようという意見があり、議連でも検討・準備している。凶悪事件を起こした受刑者に一生刑務所で罪を償わせることは、被害者や遺族の報復感情をある程度満たすことになるはずだ。

生身の人間だから

 ともかく、人間という生身の存在は加害者にも被害者にもなり得る。
「悪いヤツは死刑にしてもいい」という価値観や風潮は、突き詰めていくと「憎いヤツは殺してしまえ」「自分に都合の悪いヤツは殺せばいい」という思考に到達していく気がする。これは凶悪事件の背景にある精神構造の歪(ゆが)みと似ていないか。冷静に考えてほしい。

※無断転載を禁ず

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