夕刊フジ連載

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亀井静香のこれから勝負だ!
【111】健康体郵政公社に外科手術不要
2005.03.31

小泉純一郎首相は以前から事あるごとに、「郵政民営化を実現できれば奇跡だ」と発言しているが、これは実におかしな発言といえる。
政治家は国民国家のために実現可能な政策を実行していくことが仕事であり、実現できるか否か分からない奇跡を目指すなど、宗教的指導者を除いて世界の国家指導者としては初めてではないか。
自らの政治的権力が国民から与えられたものでなく、点から授かったものとでも勘違いしているのか。政治とは首相が好きなオペラや歌舞伎の話ではない。国民生活に直結する現実の話。予言者のような感覚で政治に取り組むことは許されない。
さて、その首相だが郵政民営化関連法案の策定に向けた政府、自民党の協議をめぐり、今週初めの記者会見で「週内にまとまるように努力する」と語り、合意を目指して引き続き努力していく考えを強調したという。
これは、とても無理な話だ。
先月のコラムでも指摘したが、日本郵政公社は2年前にスタートしたばかりで、民間から招いた生田正始総裁のもとで、日々、自己変革に邁進(まいしん)している。黒字なうえサービス向上も目ざましく、国民からも「よくやっている」「公社のどこが不都合なのか」と高く評価されている。
郵政について論じる場合、まず現在の公社のどこが問題なのか、どこを直していくべきかを話し合うのが当然といえ、自民党国会議員の大多数が「郵政民営化ありきの議論はおかしい」と考えている。ところが、現在の閣僚や党執行部は、首相が「郵政民営化に協力しないものは入れない」と一部のイエスマンだけで固めたため、その閣僚や党執行部で合意したとしても、党全体の合意とはならないのである。
与野党が均衝するなかで、法案は衆院で与党から45人が反対に回ると否決され。参院では同様に18人で否決される。この程度の人数ならばすぐ集まる。身内だけで固めた閣僚や党執行部による合意は意味がないのだ。
政府と自民党との非公式協議では、完全民営化とする時期の「先送り」や「見直し」などが話し合われたそうだが、法案の中身も決まらないうちに政治的出口論(妥協論)が話し合われるなど、これほど国民をバカにした話はない。
どうして健康体の人間に危険な外科手術をする必要があるのか。
ライブドアが外資と組んでニッポン放送株を大量取得する敵対的買収を仕掛けたことで、外資に日本企業買いへの警戒感が強まるなか、350兆円の資金量を誇る郵政公社の民営化は慎重を期すべきではないのか。
これだけ重要な法案を国民の代表である国会議員の意見を無視して、首相の身内の閣僚や党執行部だけで押し切ることは許されない。これが断行されれば日本は民主主義ではなくなる。

※無断転載を禁ず

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