夕刊フジ連載
中国首相会談ドタキャンは遺憾
先日、中国の呉儀副首相が小泉純一郎首相との会談を土壇場でキャンセルして帰国した。外交儀礼上も非常に礼を失した行動であり、きわめて遺憾な事態というしかない。
日本側の抗議に対し、中国側は「原因は歴史問題(=首相の靖国参拝)にある」といい、日本側はこれに「内政干渉だ」と反論している。反日暴力デモ以来、日中両国の緊張の度合いは高まるばかりだ。
ただ、両国は隣国であり「気に入らない」といって引っ越しするわけにはいかない。政治家の言動は一般国民の言動とは違う。感情的になって口ゲンカするのではなく、相手が理解するよう努力しなければならない。
靖国問題は日本人の歴史観、宗教観、死生観にかかわる問題である。
確かに、日本はサンフランシスコ講和条約で、東京裁判の結果を受け入れたが、これは戦勝国側が軍事裁判で戦犯らを処刑したことについて「損害賠償を求めない」と表明したもの。
国際法を無視した事後法である「平和に対する罪」「人道に対する罪」などで、戦勝国側が一方的に「A級戦犯」などときめつけた東京裁判の正当性を認めたわけではない。
日本の慰霊のあり方について。共産国家で魂の存在を認めない中国にも、冷静に粘り強く理解を求めていくべきだ。信教の自由にかかわる問題でもあり、必要であれば主要国首脳会議(サミット)など国際的な場所で、第三者も交えて話し会ってもいい。
国会議員の中には「A級戦犯の分祀(ぶんし)」を訴える意見もあるが、これは中国や韓国の歴史観に同調するものであり、私は賛成しない。
ともかく、いつまでも口ゲンカしていても仕方がない。小泉純一郎首相と胡錦濤国家主席が腹を割って話し合う機会をつくるべきだ。意見が合わなくても、本音で話し合うことに意義がある。そして、お互いの文化や伝統の違いを認め合ったとき、成熟した隣国関係が築けるのである。
※無断転載を禁ず