視点・論点

一覧へ戻る

菅原文太の「長ぐつの旅 もうひとつの日本は可能か 」に感銘

 去る6月18日NHK教育テレビで放映された、私が敬愛する菅原文太氏の「長ぐつの旅 」は、現在の人間の心の有り様に不安を抱いていた私に希望と深い感銘を与えてくれました。
 日頃氏には人間を演じるというより、その生き様を語らずとも見事に表現する役者として、更に自然を慈しみ共に営むライフスタイルに哲学を感じ、心から尊敬の念を抱いておりました。此の企画は正に菅原文太氏あってのもので、命あるものは皆自然の営みの中で共存、そして循環しながら生かされていることをあらためて感じさせる内容でした。
 番組冒頭で、「目先の利益と便利さを追い求める余り、山や川、故郷を慈しむ心が失われた気がしてなりません。」と氏は語っており、現代の人間社会に蔓延している心の有り様に警鐘を鳴らすと同時に、更に「時代にくさびを打ち込み始めた気骨ある人々と出会う為に旅に出る。」と訪ね出会う、自然と共存し身の丈に合った営みをする人々、真摯に故郷への回帰を目指す人々の清々しくも熱い思いに胸が打たれました。
 私自身も建設大臣の折、自然の梁を取り戻す河川改修を河川局長に命じたり、また政調会長時代に必要のないダム工事や完成間近の中海の干拓工事を中止させたのも、人間の都合だけで自然界の体系を破壊すれば、結局は人間の破壊に繋がると感じたからであります。
 古来我が国の民は農耕民族として自然と共に営み、その厳しさと恩恵を受けて参りました。経済的豊かさも勿論重要であるが、弱肉強食ではなく、共生の社会を構築するDNAを日本人は受け継いでる筈であります。しかし、現在は余りにも市場原理万能の拝金主義が蔓延り、誇りや魂を失った結果、人間同士の絆が希薄になっていくばかりか、生きとし生けるものを慈しむという気持ちをなくした自己中心的な人間が増える状況の中で、日本の未来はどうなっていくのか危惧しておりましたが、菅原文太氏始め出演者の方々の姿から一筋の光明を感じ、回帰への希望がみえて参りました。
 私も政治家として「美しく力強い日本」の再生に力を振り絞り、この世に生かされている自身の役目を全うしなければならないと闘志が沸いてきました。

2005年7月12日 亀井 静香

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー