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怒れ!日本人

 日毎に秋らしくなり、爽やかな季節のはずがちっとも心は晴れず。
 本日、安倍新政権が決まりました。晋三君はお父上の晋太郎先生にご指導頂いたこともあり、何れ父上の思いを継ぎ、総理になって頂きたいとの気持ちがあっただけに、小泉政治の継承を公約するに至っては怒りを覚えてならない。
 小泉総理が進めた弱肉強食の政策は社会に格差を生み、治安の悪化や、果ては身内による犯罪を増進してきた。この5年間で日本は改革という改悪にすっかり破壊されてしまったという事実を直視すれば、到底彼の描く「美しい日本」とはかけ離れている。その大いなる矛盾にどう折り合いをつけるのだろうか。内なる自分の政治的良心との間で大きな葛藤が生まれるはず。晋三君の人柄を知るだけに、むしろ同情の念を禁じ得ない。
 しかし、「小泉改革」なるものを継続することは断じて許すわけにはいかないので、徹底的に戦うつもりである。
 先日懇意にさせて頂いている、中島平和財団の創立者、中島健吉翁にお会いして素晴らしいお話を伺った。氏は一代で巨額の富を築き、アメリカの「フォーチュン」という権威ある雑誌の表紙を飾り、特集を掲載されたこともあるほど世界に名だたる大富豪である。韓国のソウル大学に招かれた折、学長からソウルではなく、日本に財団を設立されたことは非常に残念という言葉に、「私は日本で、日本の人達のお陰で事業を成し得た。その日本に対してお返しをするのが当然で、何故ソウルに財団を作らねばならないのか」と返されたそうである。1000憶円という巨額の資金を投じた財団では、国際規模の共同研究を行うグループやアジア地域の大学研究機関等、直ぐに結果は得られないが地道に研究を続ける研究者達への助成を行っており、日本への報恩の精神から国家の為に尽くしておられる。正に地球規模でのお考えには敬服するばかりである。中島氏曰く「お金儲けは技術に過ぎず、お金を遣うのは芸術です。」現在の拝金主義を嘆いての言葉であったと受けとめている。お金儲けより、儲けたお金を如何に工夫して、「生きた遣い方をするか。此方の方が楽しくもあり難しくもある」ということであろう。しかるに現在の成功者の我が身さえ良ければいい、ルール違反もバレなければ良いと云うような社会的道徳心が欠如しているとしか思えない経営者の何と多いことか。宜もなるかな、時の総理いわば国権の最高権力者がルール違反の解散をし、反対した者を抹殺するために、刺客まで送り込むということをやってのけただから。
 中島氏にお会いし、少しばかり心が晴れた気がするが、新たな怒りが湧いてきました。
 アメリカの要求に応じた金融政策を進め、様々な規制緩和をした挙げ句、郵政という日本人最後の砦まで民営化されて日本の資産は縮む一方、外交も然りで国土も縮む一方、皆さんこの5年間で何か良いことありましたか。一部の勝ち組と称される人を除き、大多数の国民の所得は減り、反対に負担は増えているはず。朝日新聞掲載の野村総研の調査によると、小泉政権下で純金融資産を1億円以上保有する「金持ち世帯」の比率が2パーセント増え、反対に3千万円未満は3.9%ダウンしたという記事が目に入った。たった2%の金持ちが全金融資産の18%以上を占めるという所得格差の拡大と、地方都市での教育・医療・福祉に裕福な自治体とそうでない地域でのバラツキ化が確実に進む現状に怒りを覚える。
 98%の中間層が下へ下へと押し下げられている中で、何故国民がもっと怒らないのだろうか。「怒れ!日本人」我々の国を真に美しい故郷(ふるさと)にする為に、国民全体の所得を上げ、日本全国で公平なサービスを受けられる政策に転換しなければならない。

世の中に 怒(いか)りなきこと  我怒(おこ)る 如何に進むや 奮起一投(ふんきいっとう)

2006年9月26日 亀井 静香

※無断転載を禁ず

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