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未来への禍根

新年が明けてひと月余り、日経を始めマスコミ各社の紙面は景気の良い話に踊り、安倍総理の施政方針演説も経済優先の威勢の良い内容に始終した。私は昨年末に安倍総理を訪ね、今後の見通しについて総理の甘い認識について懸念を持ち意見したが今の総理には馬耳東風のようだ。

折しも東京都知事選挙が公示され、2月9日開票に細川護煕氏が小泉純一郎氏の応援を後ろ盾に「原発ゼロ」を掲げ、名乗りを挙げた。私はご承知の通りかつて細川政権を倒して自・社・さ政権を作り、小泉純一郎氏とは総裁選を闘い、その後郵政解散で決定的に袂を分かった男だ。だがこの2人の連係プレーに凄い勇気だと感服している。2人とも総理辞職後は早々と政界を後にし、それぞれ自分の趣味を楽しみ、恐らく人生を謳歌していたに違いない。それがここに来て大きな敵に向かって真っ向から異を唱え、立ち上がったのだ。「何故か?」このまま自分達だけ平穏に過ごして未来に大きな禍根を残してはいけないと考えたからに違いない。東京都知事選は原発だけが争点ではないとまことしやかな意見もあるが本当にそうだろうか?都民有権者によく考えて貰いたい。東京は最大の電力消費都市である。その都民が脱原発を選択する影響力は絶大である筈だ。確かに経済も重要であり、オリンピック開催に期待も掛かる。しかし現在のように福島原発は放射能汚染を出し続け、未だ廃炉の見通しが立たたない。又使用済み燃料の最終処理の当ても無く、何より一度暴走したら人智では歯が立たず壊滅的な状況を招くのだ。そして目に見えぬ放射能汚染に何十年も襲われる恐ろしいエネルギーをこのまま使い続けて良いのか。私は未来へ最大の禍根を残すに違いないと考えている。先ずは脱原発を決定しなければ、その後の代替エネルギーについて本気に取り組む筈はない。消費最大都市の東京からは当然である。

先日福島の南相馬市長選で桜井市長の応援に行った折に避難者の方々の苦難に触れ、併せて人の気配のない放置された畑に静かに雪が降り積もるのを眺め、胸が締め付けられた。市長選は市民の生活再建に奔走している現職の桜井市長が圧勝し、胸をなで下ろしたが未だ収束しない原発に大地を汚染され、帰還の目処が立たない人々に思いを馳せれば無力感と寂しさが募るばかりである。 私の姉は広島原爆の被害者で「白血球 測る晩夏の 乾きかな」の俳句を遺し、亡くなっている。人類と地球の未来の為にやはり原発から決別するべきである。

2014.1.28


目に見えぬ 魔物に大地は 閉ざされし
ものみな失せて 雪のみぞ降る


亀井静香

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