視点・論点

一覧へ戻る

今こそ日本民族の起死回生

 デイリースポーツ(広島版)等に定期的にコラムを書いていることもあり、久方ぶりの「こう思う」の執筆となりました。
 本年4月に恒例の吉野を訪れ、「小角」という役行者が衆生済度を願って金剛蔵王権現の姿を感じ、これを本尊として吉野山を開山、その後多くの人々によって祈願に桜の木が植樹されていったことを知りました。しかしその後も吉野山は歴史の過酷な舞台として度々悲劇が繰り返されていることを思い、また現在に目を移せば、最近の新聞経済面において一様に好景気を謳い目も眩むようなお金持ちが出現する一方で、生活保護世帯が増え、身内による悲惨な殺人事件の増加という世の矛盾に忸怩たる思いを感じております。
 吉野山の満開の桜を眺めながら詠んだ和歌が再び頭を過ぎりました。

吉野山 小角の祈り 空しくて 咲き誇りても 哀しからずや

歳出削減の経済政策では日本経済の底力は蘇らない

 今月7日に政府・与党は「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」の閣議決定しました。
 歳出・歳入の一体改革を謳い2011年には国と地方の基礎的財政収支を黒字化の目標を達成するというものですが、しかし歳出を大幅にカットしながら名目経済成長率3%を実現できるのか大いに疑問です。私は7年前の自民党総裁選に名乗りを挙げた際「経済成長なくして、財政再建なし」と強く主張しましたが、経済成長をさせ安定的な税収の増加を図るためには、社会資本整備や地方経済を下支えする中小零細企業への支援等、財政支出が必要不可欠であるのに大幅な歳出削減を先行しながら、どうやってこれを実現するのか非常に矛盾を感じております。
 又細りに細っている地方経済をどうやって立て直すのか疑問です。具体性に欠け、ただの数字合わせの感は否めません。挙げ句に歳入改革に必要な対策は触れず終いで、増税に関しても小泉総理が以前「先ず徹底的な歳出削減を先行し、国民のほうから増税の声が挙がるのを待つべき」と主張されたが、言い換えれば歳出削減を先行していけば、増税や医療費の負担増等、直接弱者に負担が増加し、地方は財政難で根をあげて「こりゃたまらんから増税もやむを得ない」と言い出すのを待て、もしくは「増税が嫌だったら、多少の不便は我慢しろ」といことです。両方を煽り、結局その選択と実行を次の政権に先送りしただけであります。

先ず「増税ありき」は反対

 安定的に消費を下支えしてきた中産階級が減り、所得も減っている今、消費税を上げたら益々消費は落ち込み、日本経済は長期的に停滞するでしょう。現在バブル崩壊後最大の好景気と云うが、これは一部の大企業が膨大な利益を上げた結果で、代償として下請け孫請け等の中小零細企業の利益幅を削った為相次ぐ倒産を招きました。また大幅なリストラを敢行することで人件費のコストダウンを図り、その結果国民の可処分所得は伸びず、年収が300万円未満の低所得層の増加、生活保護世帯数も増えております。

経済が縮小し、国土が縮小、何より日本民族の魂の萎縮が問題

 小泉総理が緊縮財政を敢行した結果5年間で国債発行額も増え続け、国の借金は565兆から827兆円に増え、また規制緩和と云えば聞こえは良いが、弱者に対するセーフティネットが張られず、勝ち組負け組と2極分化が進み一層格差が拡がりました。アメリカ流の弱肉強食の競争原理を優先した結果、日本の国家の経済規模は完全に縮小し、国民の精神は萎縮しました。

独立国としての誇りを持ち、自らを防衛

 私は日本人の魂が萎縮したことが、現在の社会構造の一番の問題点であると考えます。虐めや犯罪を誘発し、治安悪化の要因であるだけでなく、安全保障の面でも独立国家としての誇りを失い、自国で守る努力もせずにアメリカに頼ってさえいれば良いという姿勢が国民全般に蔓延しました。アメリカ追従一辺倒が現在の外交に於いても日本がアジアのリーダーとして中国や韓国と対等に会話できない状況を生んでおり、日本の国益を損ねる結果になっていると考えます。
 北朝鮮の日本海に向けてのミサイル発射も韓国の調査船が竹島周辺の日本の排他的経済水域と領海内に入ってきたことも、このことと決して無関係ではありません。私は相当前から7000憶円もあれば出来るミサイル防衛を日本全土に備え付けるべきだと主張してきました。先ず確実に我が国にとって脅威である、北朝鮮からの威嚇やいざという有事に対し、自らの守りを備えるべきです。独立国家としてやるべきことをやらず、強硬な経済制裁も実際にはとれません。大国アメリカの抑止力頼みでは、独立国家として情けないばかりか、アジアに於いて日本の存在は薄れ、中国も韓国も北朝鮮も結局はアメリカとさえテーブルに着けば、日本はどうにでもなるという構図が着実に進むのみと考えております。

アジア外交、対中関係は対米関係

 アジアの中で日本が近隣諸国、とりわけ中国との良好な外交関係を築くことは安全保障の面でも、経済に於いても日本の国益上不可欠です。国家対国家の対等な関係が築けず健全な外交関係は築けません。(安保条約上手足を縛っておいたほうがアメリカにとって、好都合かもしれないが)対米関係を見直すことが必要です。主権国家としての誇りを失い、アメリカのご機嫌取りばかりしている日本では対等な外交相手として扱われなくなるのは当然であります。
 日米同盟は勿論日本の安全保障上大切ですが、日本の首都にさえ基地を置いているのは日本の為ばかりではなく、アメリカにとって極東に於ける軍事政策上必要だからです。先ずアメリカに守って貰っているという意識を是正すべきです。アメリカと同盟国として対等な絆を築いてこそ、中国を始め韓国等のアジア近隣諸国と対等な外交が出来るはずです。
 中国からの靖国問題等に関する内政干渉も対等な外交を築けず我が国がなめられていることに端を発しますが、私はよく例えで「浪花節が好きだからといって、一家の主が近隣の迷惑も顧みず、窓を開けて大きな声で浪花節を唸ったら、女房子供は近所付き合いが出来なくなるのは当然。」と表現しております。アメリカに対してぺこぺこしている一方で、強いガキ大将の陰で、遠吠えをしていても話にならないのは当然です。
 やはり外交は隣の国がイヤだからといって引っ越すわけにもいかない以上「其方の言い分は判ったが、それなら此方の言い分も理解しろ」といった、お互いの国益を尊重する道を探ることも必要です。

改革は少数派の宿命

 わが国民新党は現在来年の参議院選挙に向かって既に始動しております。
 去る7月26日、参議院選挙の候補者(比例)4名を1次公認いたしました。地方区の候補者選考も進んでおりますので2次公認の発表も間近です。9月に自民党の総理が代わったからと言って、国民新党がそれについていくわけにはいきません。そんな事に期待するより、来年間違いなくある参議院選挙において我々がイニシアチブを握り、今の流れをきっちり変えなくてはなりません。いわゆるゴールデンコンビと云われた小泉総理・安倍幹事長で挑んだ前回の参議院選挙ですら、49議席しかとれませんでした。次回は誰が総理であっても、与党が過半数を割るのは必至です。いくら衆議院が圧倒的過半数を握っていても、参議院で否決された法案を全て衆議院に送り直し、成立させるのは不可能であることは明々白々であります。故に、少数党であっても参議院の議席を安定数にするため、かつて村山政権が誕生したように、わが党の綿貫民輔代表が総理になる可能性もあります。
 歴史を見れば、変革とか改革は常に少数派によるものです。いま少数派だからといってがっくりするのは間違い。少数派が未来を変えるのは宿命であります。日本民族の魂を目覚めさせ、アメリカと中国の狭間で沈みそうになっている我が国の起死回生を信じて、どんなに苦しい闘いでも自信をもって進むべきと決意を新たにしております。

露払い 眼(まなこ)開いて 見渡せば 目覚めは近し 大和魂

2006年7月28日 亀井 静香

※無断転載を禁ず

一覧へ戻る

TOPに戻る

バックナンバー